Output Note

思考や感情を明瞭に言語化するために。

誰かにイラッとしたらその人の「行動の動機」を言語化して、自分のものと比べてみる

1.人の行動を動かす「動機」

一人一人の行動には、その行動の原動力となっている幾つかの「動機(欲求)」があって、人によってそのウェイトや優先順位付けが全然違っている。

ある人は「自己顕示欲」が主な動機だし、また別のある人は「金銭欲」であろう。日本人の場合、「承認欲求」がメインの動機になっている人も多いと思う。 

こうした動機は、「健康欲」、「出世欲」、「食欲」、「性欲」、「睡眠欲」とかだけじゃなく、「ルールを守りたい欲」、「楽したい欲」、「自分の思い通りにやりたい欲」、「一人にしてほしい欲」、「場の空気を乱したくない欲」みたいに、きちんとした名前を付けづらい動機も含めると無数にあるけれど、 ある個人の行動に有意な影響を及ぼす動機の数は、おそらくそんなに多くはない(直観的にはせいぜい5個前後)と思う。*1

 

2.「近い」価値観と「遠い」価値観

この動機のウエイトや優先順位付けの集合(=その人の「価値観」)は十人十色だが、その中でも「近い」価値観と「遠い」価値観はある。以下のA~Cさんの行動の動機が、以下のような優先順位付けだったとする。

     Aさん   Bさん   Cさん

1位  自己顕示欲 承認欲求 楽したい欲

2位  承認欲求  出世欲  節約欲

3位  名誉欲   健康欲  食欲

この場合、おそらくAさんとBさんは、相互にイラッとすることは少ないだろう。両者の動機の間に多少の差異は違えど、基本的には、いずれも社会とのつながりに重きを置いており、価値観が「近い」からだ。

他方、AさんとCさんが分かりあうことは難しい。Aさんは社会に認められることに重きを置いており、そのためならハードワークも、必要な出費も辞さないであろうが、Cさんの欲求である「楽したい欲」や「節約欲」はこれと真逆で、価値観が「遠い」からだ。

 

3.誰かの行動にイラッとしたら

誰かの行動にイラッとしたら、自分はその人の行動の基になっていると考えられる「動機」を3つ考えて、書き出してみることをお勧めする。

それが済んだら、今度は自分の日々の行動を規定していると考えられる動機を3つ書き出して、両者を比べてみるのだ。そうすれば気づくだろう。根本的には、自分の価値観とその人の価値観が「遠い」からイラッとしていることに。

この手法を取れば、「イラッ」の原因が言語化・視覚化され、ただの「イラッ」をかなり明瞭に表現できる。

この方法は、会社や学校で接する同僚・上司、クラスメート、親子・親戚、近隣住民等、生活で接するあらゆる人に使えるが、個人的には、特に「親子間」で相手の行動に「イラッ」としたときに使うことをお勧めする。

他人同士の付き合いでは、お互いの価値観が異なることがある程度暗黙の了解になっているため、お互いに自分の価値観を前面に押し出してこないが、親子の場合、「血がつながっているから」という理由で、親子間の価値観が「近い」と無意識に思い込んでいることがままある。本当に価値観が近ければ何の問題もないが、もし親子関係で「イラッ」としたら、この方法で相手と自分の行動動機を考えてみてほしい。

地理的に近くても全く価値観が異なる国があるように、親子と言えど、意外と価値観が遠いかもしれないのだから。

*1:仮にたくさん動機があったとしても、あまりに動機の数が多すぎると、人の行動を説明するモデルとしてのシンプルさ(いわゆる「オッカムの剃刀」)を欠き、扱いにくくなってしまう。ちょうど、重回帰分析において、説明変数が多すぎる過度に複雑なモデルが必要とされないように。